親の認知症が心配!介護費用を親の財産を使いたい

地方に住む78歳の母親が、いつ認知症になるか分からないので、年内に自宅(母親が所有者)が売却できるようにしておきたい、自宅を売却したお金で母親の介護費用をまかないたいが、いまから出来る方法はありませんかとご相談がありました。

 

なお、母親含め子供全員、自宅を今すぐに売却することには、抵抗があり、元気なうちは、母親に自宅で生活してもらいたいし、母親も今のまま暮らしたいと思っています。親の財産が自宅と僅かな預貯金のみで合わせて2300万円。

 

家族構成:母親が地方に一人暮らし。持ち家。

子供:2人兄弟。相談者は兄で都内にマンション購入済。弟はサラリーマンで転勤族。2人とも将来的にも実家に戻るつもりはありません。

 

【民事(家族)信託の利用をご提案】

 

母親を含めて子供は認知症だけでなく病気、事故などでいつ判断能力がなくなるか分からないと気にしており、事前に自宅を売却するようにしておきたいとのことで、「生前贈与」と「民事(家族)信託」を比べました。

 

「生前贈与」

  • 暦年課税制度

年間110万円の基礎控除しかなく、贈与税額は多額になります。相談者は、預貯金を取り崩して高額な税金を払わないとなりません。

その他にも、登録免許税は固定資産評価額の2%、不動産取得税の土地(令和3年3月31日まで取得の場合、固定資産評価額の2分の1)の特例がありますが何十万円の費用が必要です。

  •  相続時精算課税制度

母親の財産は自宅と預貯金を合わせて2500万円以下のため、相続時精算課税制度を活用して、非課税で子供に自宅を贈与することができます。しかも、相続人が子供2人であることから、相続税の基礎控除額以内(3000万円+600万円×2=4200万円)であり相続税はかかりません。ただし、登録免許税は固定資産評価額の2%、不動産取得税の土地(令和3年3月31日まで取得の場合、固定資産評価額の2分の1)の特例がありますが何十万円の費用が必要です。

 

しかも、相談者(都内在住)が自宅を贈与してもらった後、母親が介護状態になり施設に入所したときに、自宅を売却しても譲渡所得から3000万円の特別控除の特例は使えませんので所得税の支払いが生じます。

 

「民事(家族)信託」

  • 民事(家族)信託を利用した場合

今回は委託者(母親)受託者(子)、受益者(母親)という自益信託であるので、贈与税はかかりません。しかも、不動産取得税もかからず、登録免許税も5分の1になり大幅に安くなります。また自宅を売却したときに譲渡所得から3000万円の特別控除の特例(一定の要件あり)が使え(詳細は割愛)、所得税がかかりません。

 

このように、特例が使えるか否かや登録免許税等の面からは生前贈与より民事(家族)信託のほうが有利になります。ただし、民事(家族)信託には、信託契約書の作成やコンサルティング費用などが別途必要になり、総合的に判断する必要があります。